毎年多くのお花見のお客様を迎える「県営権現堂公園」。バスツアーのコースのひとつとしても定着し、遠方からのお客様も増えております。
権現堂公園の桜堤を訪れる多くの方に、満開に咲き誇る花々を快適にご観賞いただくため「NPO法人幸手権現堂桜堤保存会」の人たちが活動をしています。
昔は、川で魚やしじみをとって遊び、堤に立ち遠くに汽車(現在の東武日光線)の煙を望み、夏の訪れ前に蛍が姿を現す。今とは違う四季折々の風景の中で過ごしてきた人たちにとって、桜堤は特別な場所です。
「この風景を残したい。子供の代まで残さなくては。」保存会の発足はそんな想いからはじまりました。そして、平成17年にNPO(特定非営利法人)に認定されました。
会員の多くが地元の人たちですが、以前幸手市に住んでいた人や、お花見で桜堤を訪れたことがきっかけで参加している人もいます。完全なボランティアにもかかわらず、毎日誰かが桜堤を訪れて見回りをしています。
権現堂と言えばみなさんすぐに思い浮かべるのは「桜」かと思います。
桜まつり期間中は多くのお客様にお越しいただき賑わう堤ですが、桜の季節がすぎてしまうと近所の人がたまに散歩に来る程度と急に寂しくなってしまいます。
そこで、保存会の皆さんは桜以外の季節にも堤を楽しんでいただくために他の花も植えることにしたそうです。
今では、紫陽花や曼珠沙華、水仙と春以外の季節にも花が咲く権現堂堤となりましたが、最初は“向日葵”を植えたそうです。ご存知でしたか?
しかし、堤は平地が少ないため向日葵を楽しむには場所不足でした。また、土も固く向日葵には向いていなかったと言う事で2年で断念しました。そして次に植えられたのが“紫陽花”だったのです。
あいたスペースに何気なく植えた3本の紫陽花からはじまり、現在では100種16,000株に増え、“紫陽花の名所”と言えるほどの風景となりました。ここまで紫陽花を増やしていくのには、保存会の人たちの努力があります。
紫陽花は、意外に手がかかるそうで、会員のほとんどが花には知識がなかったため手入れの仕方、剪定、さし木の方法等、本を買って勉強をしました。一度自宅でさし木をし2年程育ててりっぱになったら堤に戻します。これを繰り返すことで現在の株数まで増やしました。
最初にはじめた向日葵は定着しませんでしたが、そのおかげで、現在の紫陽花、曼珠沙華、水仙の風景が広がることとなりました。
シーズン中には、桜・菜の花・紫陽花・曼珠沙華・水仙と四季の花が咲き誇ります。「それぞれの季節になればそれぞれの季節の花が咲くのは当たり前」と思ってしまいますが、満開の花を気持ちよくお楽しみいただくため、縁の下の力持ち・保存会の人たちの活動があります。
保存会の活動は、花の手入れはもちろんの事、枯れ枝・折れ枝・ゴミの回収などの清掃作業、危険箇所の点検と補修、水路の整備、シーズンには桜堤までの案内板を道路に設置等々、数え切れない程の作業を行っています。
桜の木は人間の髪の毛と同じで新しい枝が生えてきたら古い枝が枯れて折れる。と再生を繰り返します。そのため、ほおっておくと堤には大量に枯れ枝がたまってしまいます。活動の一つである“枯れ枝の回収”は定期的に行われますが、多い時には、軽トラック4台分にもなるそうです。
また、落ちている枝だけでなく、枯れて折れそうになっている太い枝も事前に切り落とします。これは、散策する方の頭に枝が落ちてこないようにという安全対策です。特に桜まつり期間中には人の目の高さなど危険な枝がないか、強風の次の日に折れている枝はないかなどの見回りは念入りに行います。もちろん桜にも優しく、切った枝の切り口には薬をつけたり消毒作業を行い木が病気にならないように配慮をします。
桜の木に寿命があるのをご存じですか?桜堤にあるソメイヨシノは、約50年が寿命だそうです。桜堤には大正5年に桜が植えられましたが、戦争の時に伐採され、昭和になってから植えなおされました。権現堂桜堤の桜も多くが寿命を迎えています。
満開に咲き誇る花を見るとその気配を感じさせませんが、木肌を見ると割れているものも見られます。こうした木が倒れてしまう危険があるため、寿命を迎えた木の伐採も考えなくてはいけないそうです。一緒に育ってきた桜の木の伐採は、きっと辛い決断なのではないかと思いますが、これも堤を守るための保存会の活動の一つなのです。
ご紹介したように、堤を愛し堤を守るため、毎日堤に顔を出し活動している保存会の人たちですが、シーズン中には堤を訪れたお客様が快適にお花見をお楽しみいただけるように、堤をパトロールしながらご案内しています。
幸手権現堂堤を一番良く知る人たちです。ぜひ、お声掛けいただき権現堂のとっておきの情報を聞いてみてください。